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2月14日に「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」が発売されました。

発売前からベストセラーを獲得し、Amazonのブックランキングでは1位を獲得。そんな本書を読んで感じたことや意見を、書評として当記事にまとめました。


いきなり結論からいうと、

システムを作る全ての人に読んでもらいたい本」だと思いました。

 

でも、物語ではないので面白くないんですよね。

勉強になる本なので、読んでほしいという感じです。池井戸作品を想像している人は全然違いますし、そこまでハードル上げないでくださいね。

ただ事実を並べてあるだけでこんな興味深く、恐ろしい本は初めてでした。なので思い高ぶり書評を書こうと思い立ったわけです。

 

先に私の自己紹介させてください。(どのくらいの知識を持つ人が読んだかって、結構重要だと思うので。)

自己紹介
    • 新卒入社で総合系コンサルのエンジニアへ
    • 建設系の業務システムPJに参画
    • プログラマ2年半、要件定義と設計2年、リーダーを半年ほど経験
    • 別のファームへ転職するも、すぐにフリーランスとして独立
    • 現在は超大手ECサイトのシステム構築と保守運用を担当

一言でいうと僕は5年ほど業務系システムを構築していましたよ。ってことです。

 

この記事では、以下について書いています。

  1. 著者の情報について
  2. 本の情報について
  3. 本の概要
  4. 印象に残ったポイントとエンジニアから見た主張
  5. Twitterでの感想
  6. まとめ

 

この記事は、7分ほどで読めます。

みずほ本を買うか迷っている人買う気はないけど感想や書評を見たい!という人はぜひ一読を!

※ほんの少しだけネタバレがあります。印象に残った部分を当記事で紹介する際に本文の一部を引用する形で紹介しています。ネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨!

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みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史の基本情報

みずほ本

みずほ本の基本的な情報を紹介しますね。

みずほ本の出版社と著者

まずは著者情報からです。出版は日経BPですね。そのためシステムの詳細情報まで記載してくれています。

日経コンピュータの記者が5人で書いた書籍になります。

みずほ本の基本情報について

みずほ本は日経コンピュータの記事や本を元に作成されたものとなっています。つまりネットに落ちているみずほの記事を全て読めれば、本書は読む必要がないんです。

 

じゃあ無料で読んだ方が得じゃん!

と思った人はちょっと待ってください。

 

みずほの記事は1999年からスタートしています。20年分の記事を集めることはとても大変ですし、書籍で出版されたものを入手するのは困難でしょう。

そんな理由もあって1999年から続いていたシステム開発の全てを読める本書は、システム開発に携わる人にとって買うべき一冊ではないでしょうか。

もうみずほの開発もひと段落したので、開発系の本が出るのは当分先になるでしょう。

 

\システムに携わる全ての人へ/

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みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史の概要

ONEMIZUHO

本書は3部に分かれています。その概要をそれぞれ紹介しますね。

第一部

全体的な流れとシステムの構成や体制がどうなっていたかを紹介しています。

システムの構成では、どのベンダーがどの機能を担当したか、業務コンポーネントで何を使用したのか?などを説明しています。

みずほのシステムである「MINORI」の全体構成も確認できる章ですね。

第二部

主に、東日本大震災のときに起きた障害について詳しく解説しています。

障害発生の原因やそのときの状況、障害復旧までの流れが詳しく書いてあるので、現場で実際にシステムを構築している人にとっては必見の章ですね。

障害の応急処置の判断は改めて大切だと実感しましたし、同時に難しいと感じました。

僕の中では一番興味深かった章ですね。

第三部

第三部では主に合併時に起こった障害について、詳しく紹介しています。

もともと3つの銀行が合併することは大変だと思っていましたが、それでも想像を超えるほどの困難が描かれてました。

少し昔の話なので、28歳の私には知らないこともありました。若いシステムエンジニアは知っておく必要がありますし、ベテランエンジニアも抑えて置かないと合併に直面したとき大変なことになるでしょう。

経営人と現場の距離感を感じたのはこの章でした。ここから全ての障害やシステム構築が始まったので大切な章です。

 

あわせて読みたい!

>>みずほのシステム移行完了を記念して、デスマーチの経歴を振り返ってみた

印象に残った場面とそれに対する主張

システム開発

僕は全面的に本書を支持する訳ではありません。今後の日本におけるシステム開発がより良くなるように、本書について感じたことを主張したいと思います。

文章の中から一部分を抜粋して、システムエンジニア歴5年の若造が感じたことを書いていきますね。

益荒男(ますらお)という表現で美化してはダメ

みずほFGの石井専務はMINORIの開発を通じて育った人材を「益荒男(ますらお)」と表現する。MINORIの開発で鍛えられた人材が現在、海外系や証券系、投資顧問系などの別のシステム開発に参加し、一騎当千の活躍をしているという。

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 107ページ

なぜか美談で語られているのだが、生き残った人間より消えた人間の方がはるかに多いはず。それにも関わらず育った(残った)人間が育つのはごく当たり前ではないか。

メンタルの強さ、世渡り力、ポテンシャルを持っていないと切り抜けられないプロジェクトだったように感じるので、育ったのではなく「育つ要素を元から持っていた」が正解だろう。

 

本来考えなければいけないのは、『そういったポテンシャルを持たない人材でも、残れるような現場をどうやって作るか?』ではないか。

ただ、システム品質を向上させる方法を理解しているメンバーがいるのは心強い。他のメガバンクにはない、システム構築の強みになるのではないかと思う。

伝言ゲームもできない現場

携帯電話会社は前日の十四日、携帯電話から大量の振り込みが集まるとの見通しをみずほ銀行の担当部門に知らせていた。みずほ銀行の担当部門は、みずほグループの情報システム会社であるみずほ総研の担当者に、この情報を伝えた。一方みずほ銀行のシステム部門には伝えなかった。

139ページ一部抜粋

情報も正確に伝わらないほど、忙しかったのが目に浮かびます。が、さすがに重要な情報であれば確実に伝わるようにしておくべきかと。

経営側の問題もさることながら、現場での情報連携にも問題があったので、何を信じて作業を進めるか判断できないような状況だったと推測します。

 

連絡系統は、どのプロジェクトでも重要ですよね。日本の企業はこういうところが弱いと感じるので、プロジェクト参画するときは、情報経路を明確にしたいですね。

桁違いの規模感

みずほ銀行のシステムMINORIは、以下のような数字を叩き出しました。

  • 投資額4000億円半ば
  • 開発規模35万人月
  • 1次委託先70社〜80社
  • 2次〜3次委託先900社超
  • 商品サービスは3000種超
  • 商品サービスと連携する「取引サービス」3000種

聞くだけでゾッとするような規模の数字ですね。

これを目の当たりにするだけで、この本を読んでよかったと思えるほどです。

この規模の開発は世界でも珍しく(というか無い)、システムエンジニアの人は知識拡充のために絶対に読んでおくべきでしょう。

Twitterでの感想まとめ

Twitterでの感想をまとめて紹介しますね。

様々な感想ツイートがありますね。やはり驚きのツイートが多いような気がします。

読むのが疲れるというツイートも多いのですが、それほど中身が詰まって衝撃的な内容の本となっています。

僕も2,3日に分けて読みました。なのでゆっくり時間をかけて読むと良いかもです!

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史の感想をまとめる

銀行各種

これだけ大きな開発を経て、世に繰り出されたMINORI。今後この規模を超えるシステム開発は、ほとんど無いでしょう。

合併からひきづっている経営の問題やITへ無関心な経営陣。シェアの取り合いで自分のことを優先的に考える各社ベンダー。

様々な問題を乗り越えてシステムがリリースできるんだな。と改めて実感できました。僕はシステムエンジニア5年経験程度の若造ですが、現時点で読めたことはとてもよかったと感じています。

 

まだ読んで無い人はKindle版もあるので、ぜひ購入してください。

特に「上流工程やITコンサル、社内SE」の人にオススメです。きっとあなたには考えられないシステム開発の世界が広がってます。

歴史に残る一冊をぜひご覧ください。

 

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※アイキャッチは、みずほ銀行のHPより

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